Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:琉球】逆境をプラスに。荒木遼太のブレないリアリズム

2026年8月13日(木)


8月8日に開幕した明治安田J3リーグ。しかしFC琉球は、台風13号の影響でホームでの開幕戦(ギラヴァンツ北九州戦)が9月9日に延期となった。
他クラブに遅れてのスタート。ただ、右サイドをダイナミックに上下動する荒木遼太に焦りの色はなかった。
「準備できる時間が増えたな、というぐらいの感覚です」。
そう淡々と語る彼だが、延期期間中にJ1からJ3の開幕戦をテレビ観戦したことで、焦りとは異なるポジティブな刺激が熱を帯び始める。ピッチで躍動する選手たちのプレーを追ううちに、アスリートとしての闘志が高まっていった。

その気持ちをさらに高めたのが、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスの開幕戦だった。複数人が足をつりながらも走り続ける横浜FMの執念と、2点ビハインドを跳ね返して逆転で振り切った鹿島の勝負強さ。
「技術の高さもそうですけど、ピッチから伝わってくる戦う姿勢や、勝つ気持ちをすごい感じました」と、お互いが極限状態でぶつかり合う姿について触れた荒木の胸には、延期となった自らの初戦に向け、自分たちも早く戦いたいという思いが宿り始めていた。



彼がこうした客観的な視点を持つに至った背景には、プロ入り後に経験した歩みがある。中央大から琉球に加入した2023年の開幕戦でプロデビューを飾るも、最初の2シーズンは出場機会が限られる時間が続いた。しかしプロ3年目の2025年、彼はレギュラーとしての定着を果たす。その一つの背景には、この年就任の平川忠亮監督から指導された守備ポジショニングへの取り組みにある。当初は、守備への切り替えの速さや逆サイドへの絞りといったポジショニングを頭で考えながら走っていたが、意識せずとも体が自然に反応して適切な位置を取れるまでに落とし込んだ。戦術的な理解を体に馴染ませ、2025年シーズンには出場停止1試合を除くJ3リーグ37試合で先発出場を果たすなど、確かな信頼を勝ち取るに至っている。デビュー当初こそ「自分の良さを出し、試合に出続けること」に集中していた荒木だが、現在は「いかにチーム全体を動かし、勝利を増やせるか」という意識へとシフトしており、味方との連携も今や「空気で分かる感覚」だと語る。



しかし、そうして積み上げてきた自信に手痛い敗戦となったのが、8月2日の天皇杯予選決勝、沖縄SV(JFL)に喫した0-3の完敗である。相手の運動量とアプローチに主導権を握られ、自分たちのペースを乱された。試合後、平川監督からは「闘えていない。エンブレムを背負う責任も覚悟もない」と、プロとしての根本を問う言葉が投げかけられている。
「失点したとき、あるいはしんどい時間帯に、どれだけ全員でやるべきことを統一して戦えるか。そのわずかな差が試合展開を左右する」と、副キャプテンでもある荒木はこの敗戦から、自身の課題を静かに見つめ直した。
この結果を受けて、キャプテンの鈴木順也を中心に練習から互いに要求し合い、選手同士がピッチ内外で要求を求めるなど、チームの雰囲気にも変化が生まれている。



仕切り直しの初陣はアウェイ戦。今季レノファ山口FCへ移籍した元同僚・菊地脩太との対峙が待っている。荒木は「特徴を知り尽くしている相手だからこそ、ピッチ上でお互いどう出し抜くかの心理戦になる」と客観的に語る。また、相手が実績のある格上であろうと、かつて「知名度なんて関係ない、やれる」と自然体で立ち向かってきた彼に気負いはない。今節狙うものは、理想の形だけに固執せず、いかなる展開であっても状況をコントロールして勝点3を掴む、その一点だ。
「自分たちがやりたい形じゃなくても、何が何でも勝つんだという気持ちで向かいます」。

チームは2025シーズンのJ3で16位、続くJ2・J3百年構想リーグでもWEST-Bで10チーム中9位と苦しい戦いを強いられている。だが、失意に暮れて立ち止まるつもりはない。敗戦の傷を抱えながらも這い上がり、お互いに高い要求を突きつけ合ってチームを再び機能させる。台風による順延期間をさらなる準備の時と捉え直し、鋭く牙を研ぎ澄ましてピッチへと向かうはずだ。理想の形ではなく勝利という結果だけを追求する背番号15の飾らないリアリズムに注目が集まる。

Reported by 仲本兼進