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【取材ノート:東京V】林尚輝が語る「優勝」を公言することの意義。「現場から空気を変えていくことが大切」

2026年8月14日(金)
待ちに待った2026/27明治安田J1リーグがスタートした。
開幕を前に行われたイベントで、森田晃樹主将が「いつまでもたっても『残留が目標です』と言っていてもしょうがない。『優勝が目標です』と言った方が、基準が上がるのでいい」と公言した。

その言葉に込められた森田の覚悟を城福浩監督も高く評価し、指揮官として全力で寄り添うこと。また、チームとしてもクラブとしても共により一層の高みを目指すことを誓った。

その森田とまったく同じ思いで新シーズンに挑んでいるのが林尚輝である。鹿島アントラーズから移籍加入して4年目を迎えている。百年構想リーグから副主将に任命され、チームへの責任感は格段に増した。

森田と林が「優勝」の二文字へ向けて本気で心を一つにしたのは、百年構想リーグ終了後のとある夜。
チームメイトたちとの会食を終え、親交を深めた帰りのタクシーの中だった。林が何気なく「やっぱり優勝したいよね。タイトル取りたいよね。取ろうよ!」と言うと、森田から「マジでそう思う」との返事が返ってきた。「晃樹もそう思っているんだ」と知った時の心強さはとてつもなく大きかったという。その時から、林の中でも「はっきりと口に出していこう」と腹を決めた。

開幕週のチーム立ち上げの日に、副主将としてチームメイトたちの前で話す場が設けられた際には、「言葉に出していかないといつまでたってもそこにはたどり着けないと思う。優勝を目指すクラブになりたいし、それを公言しても恥ずかしくないクラブにしたい」と仲間たちの心に強く訴えかけた。

とはいえ、東京ヴェルディは2024シーズンからJ1に復帰し今年で3シーズン目。過去2年の成績を見ても6位、17位であり、クラブの強化費用の観点からも決して潤沢な資金があるとは言い難い。鹿島アントラーズやヴィッセル神戸など常に優勝争いをするクラブのような日本代表や海外のトップリーグを経験している選手が在籍しているわけでもない。その上で、あえて「優勝を目指す」と公言することの意義を、28歳ディフェンダー(DF)は次のように力説する。

「今までと同じ『残留できたらいいよね』『中位になったら満足だね』という感覚だと、(強化に対する)資金繰りに関しても同じスタンスになってしまうと思います。そこを、僕ら現場が『優勝したい』と本気で目指す空気を作り上げて伝えることで、会社側も『じゃあそれに応えようか』となると思うんです。
(スポンサーも含めた)今の東京ヴェルディというクラブは、絶対に現場の思いを汲み取ってくれると僕は信じていて。だからこそ、現場から空気を変えていくことが大切だと思っていますし、逆に言えば、どれだけ現場が(優勝を)実現できそうな空気感を作れるかで、いろいろなものを引き寄せられる。その形の1つが公言することだと、僕は考えています」

開幕戦、東京Vは百年構想リーグで2戦2敗を喫した川崎フロンターレと対戦し、1-1で引き分けた。


46分に先制し、追加点を目指しながらも自分たちのベースである前線からの激しいプレスと粘る強い守備で時計を進めたが、終了間際の96分に追いつかれた。林は、その受け止めを例に挙げた。

「川崎F戦、残留や中位を目指す育成クラブだったら『2連敗していた相手に最初から闘って、よく守って、最後に1点追いつかれちゃったけど、挑戦的に前から攻撃にも行けていたよね』でいいのかもしれませんが、優勝を目指すクラブは『なんで勝ち点こぼしてしまった?勝ち点2失っているんだぞ』と、やはり考え方が1つ上のランクになると僕は思っています。
東京Vは若い選手も多いですし、成長していくことがすごく大事なチームです。だけど、優勝を目指すことを「野心的」という言い方をするのではなく、「当然」とするクラブになるために、じゃあ何をするのか。何が必要か。どういう立ち居振る舞いをしなければいけないのか。『まだ若いかもしれないけど、プロである以上は、そういうことはわきまえていかないと優勝は目指せないでしょ』という感覚に全員がなっていくことを求めていきたい。そうすれば東京Vがもっと良くなると思いますし、もっと高みを目指せるクラブに成長していくと思います」

もちろん、その実現が決して簡単なことではないことは重々承知している。それでも「長いスパンで考えた時に、のちに、今シーズンが1つの変わり目だったなと思えるようなシーズンになれば、晃樹と僕が主将、副主将をやった意味があるのかなと思います」と、未来の東京Vも見据える。

個人としても大きな心境の変化があった。きっかけは今回のFIFA ワールドカップ(W杯)だった。これまでの大会は「どこか『枠の外の人』として試合を見ていた」という。だが、今回は違った。
東京Vで主力のひとりとして多くの試合に出場し、副主将まで任されるようになったことで、自覚が芽生えたからだろう。初めて「日本代表に選ばれたい」「日の丸を背負いたい」と本気で思った。そうすると、意識の仕方が確実に変わった。

「今までは『一年間けがをせずにプレーしたい』とか『もっと成長したい』みたいなふんわりとした目標で、そこに今の自分の年齢などを重ねて考えたことがありませんでした。でも今回、今28歳で、もし自分が日本代表としてW杯メンバーに入れる可能性があるとしたら4年後しかないだろうなと。初めて時間軸で自分の今のサッカーに対する考え方を自問自答した時に、この年齢で、この立ち位置でプレーしていて、優勝や日本代表を目指さない理由がどこにもないなと。
じゃあ、その4年後に自分がW杯出場メンバーに選ばれたいなら、今年の1年はどういう自分であるべきか。どうなっていないとそこにたどり着けないかというように、目標の決め方が変わった感覚がすごくあって。今は徐々にそういう思考回路でやれています」

アンダー世代の代表にも一度も選出されたことがない林にとって、「日本代表」を目標に公言するのはチャレンジとも言えよう。だが、「あと何年プロとしてプレーできるかわからない。その残りの年月で自分が達成できる最高の目標に向かってやっていきたい」との思いが、自然とそうさせた。

「もちろん、今の自分の現在地で見たら、(選ばれる)可能性はかなり少ないかもしれません。でもゼロではない。今目指さないと絶対に後悔する。引退した時に『あの時に本気で目指してたら、どうなってたんだ?』と思いたくないなと、なんか急に思い始めて。なので、きちんとそこに向き合ってトライしていきたいと思っています」

昨年12月26日に誕生した愛娘が物心ついた頃、最高に輝いている父親の姿を見せられるためにも、チームとして「優勝」。個人として「日本代表」を本気で目指すことを誓う。

「ファン・サポーターのみなさんには、ここからどうやってチームが変わっていくかを期待してほしいですし、公言した以上は責任やプレッシャーもあるので、それを選手たちがどうやって乗り越えていくか。東京Vにとって挑戦的なシーズンになると思っています」

選手として、クラブとして「優勝」への本気度をどこまで示せるか。大いに注目したい。

Reported by 上岡真里江
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