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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:開幕連敗のチームに吹き込んだストイックな風。職人たちの想いに応えよチーム。

2026年8月17日(月)


ペトロヴィッチ監督は全38節のリーグ戦をマラソンに例え、開幕戦を終えた段階で「1試合1キロだとして、我々にはまだ37キロが残っている。残りの37キロの戦いをどうやって続けていくか」と言っていた。長い道のりを先頭集団で戦っていくのか、力を溜めて追い上げていくのか、レースのマネジメントは確かにランナーたちの特徴や力関係、環境条件などにも大いに影響されるだろう。Jリーグでもしばしば“優勝も残留もラスト10試合”と言われ、それまでに勝負ができる状態を作っておく、あるいは保っておくことが重要とされてきた。どの試合も奪える勝点は最大3なのは変わることがなく、巡り合わせによっては6ポインターという言葉があるように、その価値に違いが生じることはあり、勝てば優勝決定という試合の勝点3は当然のごとく、ただの勝点3ではなくなる。つらつらと書いて何が言いたいかといえば、開幕2連敗を喫した名古屋グランパスはさて、どのようにこの結果を受け止めた方が良いかと考えている。


「まだ2試合、されど2試合」と言ったのは和泉竜司だった。「シーズンの入りが悪いと、ズルズルと下位争いをすることになってくるし、みんなが危機感を持って練習からやっていかないと」と苦言を呈し、古巣の勝負強さに手本を見る。「最後まで戦って、最後に逆転してくる強さも改めて感じた。そこは自分たちに足りないところだし、見習わないといけない部分」。自分たちが最後まで闘っていなかったわけではない、しかし勝敗を“勝”に仕留めきったのは昨年の王者の方だ。“Never Give Up for the Win”をユニフォームの胸と襟に刻むチームとして、姿勢は示したがそれだけでは足りないと神妙な表情で話す。和泉もこの日は上げるクロスがことごとく相手に阻まれた。自分も含め、最後の質が相手との差だったと、1-2の敗戦を悔しげに振り返った。



和泉は「途中から出た選手もそう、みんなで90分間を通して勝たないと意味がない」とも言った。この点では鹿島戦における“みんな”は良い面を見せてもくれている。たとえばスタメンに選ばれた内田宅哉は明治安田J1百年構想リーグ、苫小牧でのプレシーズンキャンプを通じて決して良い序列に置かれた選手ではなかったが、常に全力でトレーニングに取り組み、どんな起用にも実直に応えてきた。特別大会ではボランチが主で、練習では3バックの左右でプレーすることも日常茶飯事。鹿島戦の前週にあった藤枝MYFCとの練習試合では、その直前まで3バックで紅白戦をプレーしていたのに、試合中にボランチどころかウイングバックでも使われた。そこで見せたアグレッシブさが評価されての鹿島戦での2列目起用は報われた印象も強く、キャプテンの稲垣祥も「ウッチーはキャンプの時からずっと、しっかりと、どういう立場になってもプレーで自分を発揮していた。そういうのはこういうところに現れる」と嬉しそうにしていたものだ。内田は2列目と3列目を兼ねるような高強度プレーでチームを助けた。スタメンは固定されがちなタイプの指揮官だけに、こういった起用と内容は全体のモチベーションも上げる。



もう一人、まさに交代出場から試合の流れを変えた選手が徳元悠平だ。開幕戦は出番がなく、キャンプ中盤からは主力組に入ることも減っていた。ベテランの中でも面倒見がいいタイプとしてチームメイトの信頼も厚く、最近ではU-18から参加している高校生たちの“フィジカルトレーナー”として筋トレを一緒に行ない、正しいフォームを指南したりと忙しい。1点を先制された鹿島戦では後半からピッチに送り出され、4バック的な傾向を強めていたこの日の布陣の中で本職のサイドバックらしさを存分に発揮。開始9分で原輝綺のゴールの起点となるクロスを送るなど、内田と同様に強烈にその存在感をアピールしている。「(対面の)松村(優太)くんは速いけど、それ以上に僕らの攻撃で彼に負担をかければ苦しむなと思っていたので」と、攻めの姿勢をプレーでも示した。この試合を4バック的に戦うことが分かっていた中で、より明確なイメージを持てたことがその理由のひとつ。そしてもうひとつは、今だからこそ持たなければいけない危機感の表れだった。

「“例年通りの名古屋”じゃあ、トップ4には行けないっていうのはもちろんのことですけど、だけど本当に今も同じことを繰り返しているので。もう一回、スタメン組が満足しないようなサブ組の熱であったり圧っていうのをかけていきたいと思ってます。自分も今日は出番が来るなというか、4枚で行くっていうのもあったので、出番は来るって感じて準備しながらこの1週間の練習をやりましたし、今日も試合に入るまでを作れたと思うので。もう一回、自分のやるべきことを、基本の“走る”っていうところをもう一回、徹底的にきつい中でやっていきたい。攻撃も“いつか入る”でやっていては、今回も前節のエスパルス戦もですし、そこから相手のワンチャンスにやられてというのは、『何回経験してんだよ』ってほんとツッコまれるぐらいだと思います。それを仕留められる選手に誰かがならないといけないし、その“誰か”になるために僕も考えてポジション取りして、やっていきたいとより強く感じました。思ってもいないスタートになってしまって、選手の中でも思うことはあるけど、まだ38試合中の2試合なので、どれだけ切り替えて前向きにやれるか、そして厳しくやれるかです。もう一回、クラブハウスでも練習グラウンドでも、意識を高めてやっていければなっていうのは強く思います」



徳元は自身のパフォーマンスについて「得点につながったクロスは良かったけど、その他のものに対しても1本、1本こだわって、精度上げていかないと。クロスは悔しさも残るところではありました」と謙虚だった。このストイックさがチームを変える。主力たちに“このままではポジションを奪われる”という危機感を与え、スタッフたちにも「こっちの選手を使ってみよう」という期待感を与える。チョイスする側もその可能性を選手たちに示し、真の実力主義を醸成していく。試合終了間際に勝点1を手放すことになった悔しい敗戦から抽出できる次への一手は、そういった意味でのベストチームをこの1週間で見出し、準備することだ。まだ36試合あると思っていると、月日はあっという間に過ぎ去っていく。まだ2試合のうちにしっかり手を打ち、されど2試合だったなと後からポジティブに振り返られるように。良い風を吹き込んでくれた選手たちの活躍を、きっかけにしなくてはもったいない。

Reported by 今井雄一朗