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【取材ノート:今治】J2唯一、開幕連敗。最下位スタートのモウレロ・イマバリに、なぜ心が躍るのか

2026年8月22日(土)


FC今治の取材が楽しい。練習でも試合でも大小さまざまな驚きがあり、新鮮な喜びを感じられるからだ。

それだけチームが急速に変わりつつあるということなのだろう。元バルセロナBの安部裕葵、元レアル マドリードBの中井卓大ピピの獲得で注目を集めるが、決してそれだけではない。

2026/27シーズン、チームは新たにスペイン人指揮官を迎え、40チーム中35位と低迷した明治安田J2・J3百年構想リーグから浮上し、J1昇格に挑む航海へと漕ぎ出した。アベル モウレロ監督の初陣となった開幕のいわきFC戦。試合が始まりほどなくして、『え?』となった。今治のゴールキックでGK立川小太郎がボールをセットするのに合わせて、試合スタート時のフォーメーションである4-2-3-1の右サイドバック、梅木怜が3トップ気味に最前線の右へと張り出してきたのだ。


梅木が上がった後のスペースには、右サイドハーフの新井光が落ちてポジションを取る。まさしく“セットプレー”である。

梅木は流れの中でも自分たちの攻撃の際にたびたび高い位置を取り、いわきのディフェンスラインと駆け引きを繰り広げていた。9月に行われるアジア競技大会のU-21日本代表にも選出されている右サイドバックにとって、新たなチャレンジである。

「攻撃のときは左の(森)晃太くん、真ん中のエジ(エジガル ジュニオ)、右の自分と3人が前に張るんです。でも、まだ自分の中では難しさがあって。

サイドバックということで、これまではボールを当てて上がっていくのが自分のスタイルというか、特徴を一番出せる形だと思っていました。でも今、監督に求められるのは、ボランチがボールを持って前を向いたときには、相手ディフェンスと駆け引きをしていること。タイミングを含め、難しさ、悩んでいる部分もあります。

それでも何を求められているかは理解しているし、練習からもっとコミュニケーションを取って合わせていけば、いいものになると思っています」

思いつきのレベルで、いわき戦の直前に打たれる策ではない。7月の室蘭キャンプから、すでにその位置取りの提示があったという。

前進するための挑戦と可能性の追求は、2節・RB大宮アルディージャ戦でも引き続き行われた。試合後の会見でモウレロ監督は、タイミングをさらにすり合わせる必要性に言及している。

「前進する瞬間、特に怜のところでの動き出しがかなり早くて、自分たちがまだ準備できていないのに、すでに彼が動きだしている状況が起こっていました。それによってボールホルダーがパスを出せないこともあった。中盤の選手が良い状態を作れた瞬間に動きだしてほしいと、彼には伝えました」

大宮戦後、オフ明けのトレーニングで、チームはさっそく修正作業に取り掛かった。狭く限定されたエリアでポゼッションして、グループで隣のエリアに突破を図るメニューの中で、モウレロ監督は選手たちの意識を、次のように方向付けた。

「これはロンドじゃない。ひたすらボールを回し続けたり、バックパスするのが目的ではなく、全員がつながって、越えていくことなんだ」「どこにパスを出すか。それは出し手ではなく、受け手が決める」「体の向きは、ボールがどこから来て、どこに行くのかを考えて作ること」

適切なポジション、態勢を取れば、自ずとボールは動いていく。モウレロ監督のサッカーのエッセンスが、日々チームに注入されている。

モウレロ監督のもと、パスサッカーへの転換が始まって2カ月足らず。「このサッカーを体現できるようになるまでには時間がかかる。難しい、苦しい時期も出てくると思う」という監督の言葉のとおり、開幕のいわき戦は1-2、続く大宮戦は2-3と、J2屈指の高強度を誇るチームに競り負けて、リーグで唯一の連敗スタート、最下位となった。

今季は5人体制のキャプテンの1人、駒井善成は、手応えを感じているからこそ、他の4人のキャプテンと協力しながら、チームが進むべき道を見失わないように持っていきたいと力を込める。

「新チームということで、早く勝点3を取りたいのは正直なところですが、やっぱりそんなに甘くはないので。やり続けていくしかないと思っています」

横浜FCから期限付き移籍で加入した明治安田J2・J3百年構想リーグでは、主にボランチが持ち場となっていた。迎えた今シーズン、開幕から1.5列目の位置で2試合先発すると、後方からビルドアップで運ばれてきたボールと最前線のエジガル ジュニオとをリンクさせて、チャンスを作る役割を担う。

「もともと前めのプレーヤーだし、監督のパスサッカーは自分のスタイルに合うと思います。だからこそ、もっと決定的な仕事をやらないといけない。

連敗して悔しい気持ちもあります。でも、ここで監督のサッカーをブレさせてしまうのが一番ダメです。このサッカーを曲げずに貫いて、その先に良い結果が生まれる。そう信じてやっていきます」

激しい点の取り合いとなった大宮戦で、6分に直接FKから先制ゴールを決めた森も、チームの成長と進化を実感している。


「キャンプから『今治のスタイルはこれだ』と積み上げています。自分たちのスタイルを持つという姿勢がある。やり続けて、それを結果に変えていけたら、怖いものはないというか。どんなチームに対しても戦えるという感覚があります」

試合開始早々、先制した大宮戦だったが、前半のうちに逆転される。しかし68分、森が蹴った右CKのクリアボールを、持井響太がワントラップから右足アウトでこすり上げる技ありのボレーで決めて、2-2の同点に。5,316席から8,848席に拡張され、満員となったアシックス里山スタジアムのボルテージが最高潮に達したのは当然だった。

だが、テクニカルエリアのモウレロ監督は、サポーターの大声援に乗って一気呵成に勝ち越そうというのではなく、身振り手振りでしきりに選手たちに『落ち着け』とメッセージを送っていた。そのときの指揮官の心情、思惑とは――。

「まずはっきりさせておきたいのは、自分たちは常に勝ちに行くのは変わらない、ということです。

では、なぜああいうジェスチャーをしたかというと、大宮の前線にも強力な選手がいますし、焦って攻め急いでボールロストが増えれば、それだけカウンターで背後を突かれる危険も増します。ですから、あの時間帯では自分たちのボールになったりスローインになったとき、しっかりボールを持って相手に持たせない、そういうことが必要だと考えたんです。

ボールが前後に速く動くとき、どうしても自分たちは苦しむことが多くなります。相手陣内に押し込み、縦ではなく横にしっかりボールが動けば、自分たちの展開に持って行けます。2-2に追いついた後、縦に急ぐのではなく、自分たちで横に動かしたかった。やるべきことは、それまでやっていたことを、勝ち越しゴールを取るまで継続することでした」

慌ててアクセルを踏み込むのではなく、揺さぶりながら、訪れたチャンスを仕留める――。だが指揮官の見込み通りに事は進まず、後半アディショナルタイムにサイドチェンジからの速攻を食い止められずに失点し、敗れた。

「点を取るためにアクセルを踏みます。ですがタイミングが重要で、常に目いっぱい踏み込んだままでは選手たちも疲れてしまいますし、自分たちがやりたくない、オープンな展開になってしまいます。いつ、どこでそうすべきか。タイミングをうかがいながら、その瞬間に踏み込むことが大事なんです。

自分たちでボールを動かしながら、アクセルを踏める選手である左の晃太、右の怜を見つけた瞬間、そこから一気にアタックしていく。大宮戦でも、それができている場面、実感はありました。2-2となってからもボールサイドにしっかり集まり、パスが4本、5本とつながって、最後にアクセルを踏み込みたかった。しかし、まだ自分たちには足りないところもありました。

三つのリズムの変化があるんですよ。まず一つはボールサイドに選手が集まって、ボールを動かすときのリズムです。次に、ボールを逆サイドに持っていくためのリズム。ここで一つ、リズムの変化が起こります。そして自分たちが前進できる、越えていけるスペースを見つけた瞬間のリズムの変化です。前進していくためのリズムを三段階に分けて、選手たちに意識づけているところです」

3節はアウェイでカターレ富山と対戦する。4バックだったいわき、大宮と異なり、3バックの相手だが、モウレロ監督は「プレッシャーの掛け方が変わってきますが、私たちがやりたいことは変わりません」とブレるそぶりはまるでない。着々と今治のチューンアップが進む。さらなる驚きに近づいている予感は強まるばかりだ。

Reported by 大中祐二