Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:清水】東海大学と清水エスパルスの画期的なコラボが実現!育成型クラブとしての価値ある一歩を共に

2026年8月31日(月)

【左から東海大学病院本部 本部長 渡辺 雅彦、東海大学学長 木村英樹、㈱エスパルス代表取締役社長 山室晋也、東海大学付属静岡翔洋高等学校校長 髙塚 純】

少し前の話で恐縮だが、8月7日(金)に締結された「東海大学・エスパルス包括連携協定」が、クラブの未来に向けて非常に意義深い取り組みだと感じたので、今回はその価値や可能性についてお伝えしたい。

選手寮を新設する重要な意味

「包括連携協定」という言葉だけを聞いても、具体的に何をするのかさっぱり分からないが、大まかに言えば、両者が持つ強みや資源を生かしながら、さまざまな分野で連携し、双方にとって価値のある取り組みを進めていこうというコラボレーションだ。その中の一つの柱として、清水のアカデミーと東海大翔洋高校との連携による選手育成の強化がある。

きっかけは、清水の選手寮(トップの若手選手とアカデミーの寮生が利用)を練習場に近い三保半島内(静岡市清水区)に移転する計画が持ち上がったことだった。

その背景には、近年サッカー選手のアスリート化が加速している中で、現状の育成環境では身体作りの面で十分な対応ができないという悩みがあった。とくに練習後30分以内に食事をとることの重要性は以前から指摘されてきたが、選手によっては19時過ぎに練習が終わってからバスや電車で1時間以上かけて帰宅する場合もある。それでは栄養摂取の面だけでなく、学業との両立にも難しさが生じてしまう。

そのため他のJクラブでは全寮制を導入しているところもあるが、現在の選手寮の規模では難しい。それが新寮では個室が80以上と十分なキャパシティがあるので、ユース所属選手全員の入寮が可能になる。ちなみに、未利用となっていた既存施設を取得し、選手寮として再整備するため、改修工程も整備費用もかなり抑えることができているようだ。

立地は、日頃練習している育成グラウンドから自転車でも10分程度の場所なので、30分以内の食事というハードルもクリア。食べる量を増やす努力もしやすい。また、移動時間を減らせることで休息や学習の時間を確保するとともに、共同生活を通じた自立心や協調性など人間力の向上にもつなげることができる。


【新選手寮 完成予想図】

選手の交流だけでなく、医療の面でも

そうした新寮の効果をより拡大するためのアイデアとして出てきたのが、東海大学との提携だった。

寮から翔洋高校までは徒歩で17分程度。ユースの全員が同校に入学すれば、移動時間をさらに短縮でき、選手たちが個人練習に励む時間を増やすこともできる。

また、ジュニアユースからユースに昇格できなかった選手についても、本人が希望して翔洋高校への進学・サッカー部への入部を選択した場合、その後の成長が認められれば、ユースへ転籍する道も開かれている。それは翔洋高サッカー部の強化という面でもメリットがあり、今は現実的ではないが、将来的には逆にユースから翔洋高への転籍という形も登録制度上の条件が整えばありうるだろう。指導者やノウハウの交流という面でも、翔洋高にプラス要素がある。

そこから提携プランはさらに発展し、医学部を持つ東海大学と医療分野でも提携するという話が実現した。これが「包括連携協定」の二つ目の柱だ。

提携発表の記者会見に登壇した東海大学の木村英樹学長は「スポーツ医療というのは、アスリートを元のレベルまで戻すことができなくてはならないので、一般の方を普通のレベルに戻すよりもはるかに難易度が高い高度な医療です。そういった知見をこの提携で蓄積しながら、逆に提供をしていくことができればと思っています」と語った。

その第一歩として新たな寮の一角に、スポーツ整形に強みのある診療所が開設される計画があり、そこに東海大の整形外科医が派遣されることになっている。プロを目指すアスリートたちを数多く診療して実践的な知見を増やし、データを蓄積していくことは、大学側にも得るものが大きいようだ。

もちろん清水側としても、寮内に高度な医療施設があるというのは最高の環境であり、トップチームの選手にとっても大きなプラスとなるはずだ。

また、東海大もエスパルスも地域貢献という面には元々注力しており、寮内のスポーツ治療院に一般の患者を受け入れることも予定している。その他にも提携を生かして地元を活性化していく道筋を模索しており、木村学長は「本学には観光学部や海洋学部、人文学部などもありますので、エスパルスさんの社会貢献の活動においてもコラボレーションできるのではないかと期待しています」と言う。


有力選手の獲得にも大きな効果が

エスパルスの山室晋也社長は、今回の協定に関して次のように語る。
「出発点は、我々の育成部門の改革です。十分な投資効果が出ているのか、パフォーマンスが発揮されているかという問題提起から、何をすべきか、何が欠けているのかと検討した過程で、選手を全国から集められるような魅力ある施設、付加価値というところを総合的に検討し、東海大学さんとの協議も進めました」

「この協定を通じて、エスパルスが養ってきたトップチーム、アカデミーにおける育成ノウハウと、東海大学が有する教育・医療・研究の高度な知見を融合させることで、スポーツ・教育・医療を一体化した新たな地域連携モデルを構築してまいります。これは全国的に見ても先進的な取り組みであり、大きな可能性を秘めていると考えています」



三保地区は、東海大学の発祥の地であり、エスパルスにとっても原点と言える土地。その縁で実現したコラボレーションは、お互いに得がたいメリットがあるという意味でも大きな価値がある。
 新寮が完成して選手たちが入寮するのは、来年春の見込み。新1年生は、全員が翔洋高に入学する予定だ。またユースだけでなく、いずれはジュニアユースでも県外や遠方の選手が入寮できる体制が整うだろう。

よりサッカーに集中しやすく、学業との両立もしやすく、身体的成長やケガの治療・予防の面でも非常に魅力的な環境が整うことは確定した。それに惹かれて、全国から高い能力を秘めた選手たちが集まるようになれば、育成型クラブとしての基盤を強化する大きな一歩となるはずだ。

Reported by 前島芳雄