
渡邉禅の高速クロスを、藤川虎太朗がバックヒールで仕留める――。芸術的なシュートに目を奪われがちだが、その裏に隠された右サイドでの崩しも見事だった。
明治安田J3リーグ第4節、AC長野パルセイロがホームにザスパ群馬を迎えた一戦。長野は1-2で逆転負けを喫したものの、26分には理想的な先制点を奪った。
群馬の4-4-2のブロックに対し、長野は4-4-2から3-1-4-2に可変。最終ラインで3対2の数的優位を作りながらボールを回し、右ウイングバック化した渡邉にパスを送る。「可変しながらボールを握るのは形になりつつある」と渡邉が言うように、それぞれのポジショニングはスムーズだ。
チーム戦術の次は、個人戦術が機能する。演者となったのは右ウイングバックの渡邉と、右シャドーの樋口叶。右サイドで2人のコンビネーションが光った。
ボールを受けた渡邉が前向きにトラップすると、群馬の左サイドバックが食いついてきた。渡邉は縦へのスライドに対し、横へのドリブルで矢印を折る。その間に右シャドーの樋口が左サイドバックの背後へ。渡邉のパスを受けてビルドアップの出口となった。
右サイドを抜け出した樋口は、そのまま右足でアーリークロスを送るイメージでいた。しかし、「相手が結構食いついてきた」ことを察知し、咄嗟に判断を変える。ボランチが横へのスライドでカバーに入ってきたところでキックフェイント。その間にオーバーラップした渡邉を使い、最後は渡邉の高速クロスを藤川がバックヒールで仕留めた。
「良い崩しでの得点だった」と今季初先発の樋口。パスをスムーズに回すためのチーム戦術と、ドリブルで相手の矢印を折る個人戦術が相まって、理想的なゴールが生まれた。これまでビルドアップは左サイドが出口となるケースが多かっただけに、右サイドで完結できたのも好材料だ。
Reported by 田中紘夢