Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:清水】大学3年生でJ1デビューした辻友翔。注目の新星に象徴される大学生選手の可能性とは

2026年9月4日(金)
以前から何となく感じてはいたが、今年に入ってとくに強く実感していることがある。
それは、大学生のレベルが近年非常に高くなっていることだ。

「日本を代表するサッカー選手に」

今の清水エスパルスでいえば、それを象徴するのが國學院大學3年生の辻友翔だ。

今年7月3日に再来年(2028年1月)からの加入内定が発表され、8月7日に特別指定選手として承認されたばかりの20歳。そこから8月23日のU-21 Jリーグ開幕戦(vs浦和)で公式戦デビューを飾り、そこでのパフォーマンスを評価されて、8月29日のJ1第4節・柏戦で早くもトップチームでの先発出場をつかみ取った。


この試合では右ウイングとして65分間プレーし、吉田孝行監督は「非常に良いパフォーマンスでしたし、前半から攻守にアグレッシブにやってくれたので、非常に良かったと思います」とJ1デビュー戦とは思えないプレーぶりを高く評価した。

さらに中3日の第5節・FC東京でも先発し、今度は左ウイングとして堂々とプレー。


帝京第三高校時代はボランチを務めていて、U-21リーグでは左インサイドハーフとして出場するなど、さまざまなポジションに適応できることも証明している。
 
辻本人が語る持ち味は「スピードを生かしたドリブルで仕掛けたり、そこからシュートやクロスにいってゴールに絡むところだと思います」とのこと。それだけでなくパスの判断や質にも優れ、攻守におけるプレー強度や機動力もあって、運動量やインテンシティにおいて吉田監督が求める高い「基準」をクリアしているからこそ、プロの厳しい競争の中で先発をつかめている。

それでも彼は、まったく満足してはいない。FC東京戦後には「デビュー戦よりは緊張せずに自分のプレーができたかなとは思いますが、まだ全然結果が残せていないですし、自分の中でもまだまだ改善点がたくさんあります。もっと仕掛けることや、ボールを預けて中に入っていくこと、守備でもできることはもっともっとあるので、本当にこれからだなと思う試合でした」と語り、自分はもっとできるという自信も匂わせた。

だからこそ将来の夢も大きい。「日本を代表するサッカー選手になるというのが目標なので、ここがゴールではなくスタートだと思っています。これからどんどん練習でも試合でも結果を残していって、より高みを目指していきたいと思います」(辻)と、自身にまだまだ大きな伸びしろがあることを信じている。

大学での選手育成は、日本独自の大きな強みに

また清水では辻だけでなく、今年大卒加入した日髙華杜と大畑凜生(ともに法政大)も即戦力としてのクオリティや強度を公式戦で証明している。

筆者が取材している他チームでは、藤枝の大卒ルーキー4人組=中村優斗(立正大)、真鍋隼虎(明治大)、三木仁太(関西大)、近藤優成(国士舘大)の活躍ぶりが話題となり、本コラムでも取り上げている。
【取材ノート:藤枝】藤枝MYFCで輝く大卒ルーキー4人。彼らがチームにもたらす「相乗効果」とは

今夏にC大阪からレンタル加入した金本毅騎は、阪南大に在学(4年生)しながらプロ契約し、ここまで4試合で3得点。J2得点ランクの2位に入っている。

在学中からプロで十分通用する力を蓄えている選手が、近年格段に増えていることは間違いない。
 
筆者がU-21 Jリーグ開幕戦を取材した際、清水ではユース所属の選手が6人出場し(先発は杉山琥二郎1人)、浦和のほうは1人のトップ選手以外は全員がユース選手で構成されていた。それでも浦和は、トップ選手が多い清水に圧倒されることなく、敗れたものの2-1の接戦を演じた。

その試合を見ながらふと思ったのは、「でも、ここに出ているユース選手でトップ昇格できるのはごく一部だから、多くは大学に行くんだよな。だったら大学のレベルが上がるのも当然だよな」ということ。もちろん高校サッカーのレベルも上がり、高校のサッカー部から大学に進む選手の中からも、辻友翔のような逸材が次々に現われている。
 
ちなみに、今年のワールドカップ日本代表では、大学出身選手が長友佑都(明治大)、谷口彰悟(筑波大)、伊東純也(神奈川大)、早川友基明治大)、渡辺剛(中央大)、上田綺世(法政大)、塩貝健人(慶應義塾大)と7人選出されている。今回はケガで外れた三笘薫も筑波大の出身だ。

ヨーロッパや南米では大学経由でプロになる選手は非常に希だが、日本では育成ルートのひとつとして大学サッカーが大きな役割を担っている。それは世界的には珍しいことだが、日本独自の強みでもある。

日本人の高校年代での成熟度を考えると、身体も心もプロのレベルに届いていないケースが多いことは否めない。だからこそ「遅咲き」と言われる選手も多いが、彼らにとって大学生活で自立心を養いながらじっくりと地力をつけ、プロに再挑戦できることは非常に大きい。

選手たちの意識としても、先輩たちの背中を見ながら「高卒でプロになれなかったとしても全然あきらめる必要はない」と信じられることは大きな励みになる。海外進出という面でも、大学経由が手遅れにならないことは上記の日本代表選手たちが証明済みだ。

海外ではスペイン代表のラミン・ヤマルやパウ・クバルシをはじめ10代で世界トップレベルの力を見せている選手がいて、それに比べて日本は遅れているという声もある。だが、日本人の特質や国民性を考えれば、18歳を過ぎてから急成長する選手にとっての最適な環境として、大学サッカーは今後も大きな成果を挙げていくのではないだろうか。

Reported by 前島芳雄