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【取材ノート:福岡】湯澤聖人が抱くチームに対する強い危機感

2026年9月24日(木)


2026/27明治安田J1リーグ第8節・広島戦は、振り返るのが嫌になるほど後味の悪い試合になった。理由は明確。前半にサッカーの醍醐味を消し去ってしまう多くのあってはならない事象が起こったからだ。


まず、主審がゲームを上手くコントロールできていなかったことがこの試合を難しくさせた一因として挙げられる。だからといって、選手たちは冷静さを欠いてプレーしていいということにはならない。前半だけで両チームにイエローカードが5枚出され、福岡は2人が退場になった。特に21分、レッドカードとなった上島拓巳の危険なタックルは、到底許される行為ではない。とにかく、今は傷つけられた松本泰志(広島)が一日も早くまた元気にピッチでプレーする姿が見られることを切に願いたい。

サッカーは、自チームだけでなく、相手チームや審判など多くの人々の支えがあって試合が成り立つ。「敵」は一人も存在しない。当然、ピッチ上は戦いの場である。常にどの選手もその場に一歩踏み入れば、相手を上回りたい、相手に勝ちたいという気持ちでプレーしている。ただ、それは、試合を成り立たせてくれる人々への敬意と熱い思いをコントロールする自制心があった上での話だ。サッカーは、フィジカルコンタクトが多いスポーツ。強度高くプレーする中で、予期せぬ怪我が起こってしまうこともあるが、本来は自分の身体を傷つけてまで戦う競技ではないし、ましてや相手の身体を傷つけてまで戦う競技ではない。

湯澤聖人は、試合が終わるとすぐに松本のもとに駆けつけて声を掛けた。2020年の夏に期限付き移籍で福岡にやってきた彼と半年間共にプレーし、J1昇格を成し遂げた仲間だったからだけではない。

「もし、一緒のチームでプレーしていなかったとしてもああいうプレーがあったら心配ですし、過去にもそういう怪我人を出してしまったチームだったので、そういう中では自分の心的にどうにか大怪我じゃないといいなという気持ちは多くありました」

自分たちが招いた結果とはいえ、決してサッカーに集中できるような状況ではなかったこの試合。背番号2は、2人少ない9対11の58分、今シーズンのリーグ戦で初めてピッチに立った。相手は冷静に、そして巧みにボールを動かし、ゴールを陥れようとしてくる。「とにかく無失点で」。チームとして目線が揃った福岡は、GKの小畑裕馬を中心に全員が身体を張った粘り強い守備で数え切れないほど訪れるピンチを弾き返し続ける。68分、東俊希(広島)のスーパーゴールによって1点は失ったが、33本のシュートを浴び、大量失点してもおかしくない展開で最小に抑えた。これが本来のアビスパらしさ。敗れはしたものの、ピッチに残った選手たちの奮戦に見る者の心は熱くなった。

ただ、2020年から福岡でプレーし、酸いも甘いも知る湯澤は違和感を覚えていた。これが今のアビスパらしさなのかと。もちろん、広島戦の9人で見せた懸命に戦う姿勢を否定しているのではない。彼が気にしているのは、それが今、チームのベースとして存在しているからできたのではなく、試合の状況がそうせざるを得なくしただけではないかということ。意図的ではなく、偶発的な要素が強いだけに「『らしさ』と言われれば『らしさ』かもしれないですけど、それが本当の『らしさ』なのかというのもちょっと最近分からなくなっていきている」と不安を口にする。

福岡はこれまで「堅守」を売りに2021年からJ1の舞台に生き残ってきた。今は、堅守をベースに長年の課題である得点力不足の解消を目指しているにもかかわらず、その根底が崩れている。ここまで9ゴールと得点数は伸ばしている一方、失点はそれを上回る12。攻撃的に戦えば、得点は奪えてもそれ以上に失点を喫し、守備的に戦えば攻撃の形ができなくなり、最終的に失点して勝点を上手く積み上げられていない。攻守のバランスの最適解を見つけられず悪循環に陥っている中で、次のリーグ戦まで約3週間ある中断期間。この貴重な時間を使ってチームとしてのベースである堅守を取り戻す必要があるが、湯澤は難しさを感じている。

「まず、そもそもベースとして堅守をしようとしているのかというところも分からないので…。前から(ボールを)取りにいって(自分たちの)ゴール前でも堅守するというのは、なかなか難しいことだと思います。それって相当チームとしてエネルギーがいることです。運動量がいることだし、規律も相当ないといけないことだと思うので、そこをどうするかというのは僕も(チームの状況を)見ながらやりたいと思います。結局、守備(的な戦い方)で行った方がいいと思うんだったらしっかり守らないといけない。そういうふうに伝えないといけないし、そうじゃないほうがいいんじゃないかと思うんだったら違う選択をしないといけないと思います。そこをもう迷っている場合じゃないので、早くチームとして合わせないといけないです。そこが今どっちなのか…。(開幕してからの6試合は)流れで言うと(攻撃的な戦い方で)攻めていたじゃないですか。失点が多くて(第7節の清水)エスパルス戦で失点を減らそうとして、(守備的な戦い方をして)それでも失点が止まらないから負けているじゃないですか。結局、攻撃の形もなかなか出なくなって、どっちか(戦い方を)早く示さないと中途半端になっていっているので、(攻撃的な戦い方を)貫くなら貫くでいいし、堅守というか、みんなで守って勝点1でも取っていこうよと言うんだったら別にそれでもいいし、早く合わせることが大事だと思います」

8試合を終えて1勝1分6敗の18位。J2降格圏に沈み、自分たちの方向性を定められていない苦しいチーム状況を好転させるためにベテランである32歳の湯澤は、マネジメントの重要さを説く。

「まずは、元気を出してやっていくしかないと思います。チームとしては、やっぱり勝つエネルギーみたいなのがないと勝てるゲームも勝てないと思います。自滅に近い勝点の失い方というのが多すぎるので、そういうのをしっかりチームとしてどうコントロールしていくか、戦術云々もそうですけど、しっかりチームとしての方向性とか規律とか、そういうマネジメントの部分が大きいと思います。会社とかでもそうですが、やっぱりチームが組織されていない会社が黒字経営になるわけないと思います。チームとして上手く組織が成り立っていなかったらなかなか勝てるものも勝てないと思うので、そういう面でも僕は(選手の中で)上の歳なので、誰かに頼るというよりは、周りを見ながら、空気を読みながら方向性を示していくこと。誰かが責任をもって発言するというのも大事なのかなと思います」

ここまで思い描いた結果を出せていないからこそ、今、最も大切なのは、自分たちがどのような戦い方を貫くのかしっかりと意思表示し、チーム全員が目線を揃えてピッチ上で戦うこと。「しっかり僕も疑わないで信じて、要所でしっかり締められるようにならないと」。全ては福岡が勝つために。湯澤は、強い危機感を持ちながらチームと向き合っている。

Reported by 武丸善章