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【取材ノート:今治】監督交代で反撃に転じるFC今治。ベテラン山田貴文が体現する闘志の行方

2026年9月24日(木)


内容と結果に、奇妙なねじれが存在した。

ゴール期待値、被ゴール期待値はいずれもリーグ中位の数値を出しながら、7節を終えて1勝1分5敗の最下位。FC今治は9月20日付けで今季、就任したスペイン人指揮官のアベル モウレロ監督を解任し、久保山由清ヘッドコーチを後任とする決断を下した。

ゴール期待値、被ゴール期待値からすれば、攻撃も守備も、ある程度はやれている。そう捉えても間違いではないだろう。だが、それが結果につながらない。そんな状況について、開幕から4連敗したあと、モウレロ前監督は次のように語っていた。

「データは、あくまでデータです。データには、何の決定権もありません。

私は自分の感覚を信じる人間なんです。どういう感覚かというと、日々のトレーニングや試合で、選手一人ひとりから伝わってくる彼らの感情、感覚のことです。つまり、実際には現場レベルでしか感じ取れないものなんです。

そういう自分の感覚が軸にあって、そこで初めてデータが手助けをしてくれる。そんな関係性だと、私は思っています。

その上で、ポゼッションやゴール期待値、被ゴール期待値など、さまざまなデータがJ2の1年目だった2025シーズンよりも、大幅に向上しています。データが、私たちが信じるサッカーが間違っていないと物語っているのです。

しかし、データは何も決定しません。そのデータが裏付けとなるように、自分たちは勝っていかなければならないのです。結果が大事なんです。

このように結果が出ていない中でも、選手たちは日々、なぜ勝てないのか、どうすれば勝てるのか追求し、本当に良いトレーニングができています。データが証拠となるために、私たちには結果が必要です。結果を出すために何が必要なのか、何を変えていかなければならないのか。しっかり分析して、良い準備をしていきます」

ボールを保持し、前進して攻めるサッカーの構築に取り組むモウレロ監督は、5節・大分トリニータ戦でそれまでの4バックから守備で5バック化する3バックに変更。1-1で引き分けて、初めての勝点を手にした。しかし、続く6節・サガン鳥栖戦に1-0で初勝利を挙げたものの、体調不良で欠場した7節・横浜FC戦(●1-2)後、解任に。内容の改善とデータが、結果の裏付けとなることはなかった。

横浜FC戦は代行で指揮を執った久保山新監督が、今治のコーチングスタッフとなったのは2024年のことだ。長年、アカデミーの指導者を務めた清水エスパルスを離れて新天地に立つと、ヘッドコーチとして服部年宏監督(現ジュビロ磐田U-15監督)を支えて、クラブ初のJ2昇格に尽力した。以来、倉石圭二監督(2025-26年4月、現ヴァンラーレ八戸監督)、塚田雄二監督(26年4月-6月)、そしてモウレロ前監督の下でヘッドコーチを歴任した。自身、初のトップチームの監督就任に際して、「今必要なのは、自分たちの強みをピッチ上で100%表現することです。それは、今治らしく攻守においてアグレッシブに、そしてハードワークするサッカー。ボールを奪い、スピーディにゴールへ向かっていく姿勢です」と、原点回帰の姿勢を打ち出した。

久保山新監督が就任して迎えた初戦は、連戦最中(さなか)の天皇杯3回戦・柏レイソル戦だった。最優先されるべきは3日後のリーグ戦、湘南ベルマーレ戦であり、ターンオーバーで臨んだ柏戦は0-4で敗れたが、チームは原点回帰と反撃に向けた最初の一歩を記した。3-1-4-2に布陣したチームはハイプレスを前面に、点差を付けられながらも食い下がり続けた。

2018年から今治でプレーし、在籍年数が最も長いMF山田貴文は、インサイドハーフの一角で先発。後半途中から右ウイングバックにポジションを移し、最後は足をつりながらもフル出場して、今治らしくアグレッシブに、ハードワークするサッカーを体現した。

「クボさん(久保山監督)が監督になって、前からハイプレスで行こうと試合に臨みました。モウレロ監督のときも、最初の構える形から、3バックになった大分戦からは前に行くことが意識されていました。

今日は柏が相手で、ゴール前のクオリティがとても高いことは分かっていたので、しっかりプレッシャーを掛けていきました。先制されるまで(37分)は、相手にそれなりのストレスを感じさせられたと思うし、その意味では悪くありませんでしたが、1回のチャンスできっちり仕留められて、そこに大きな差があるのかなと思います」

監督交代から柏戦までの準備期間は、ごくわずか。メンバー変更もあり、守備を整えるだけで精一杯だったはずだ。その分、攻撃は自身と駒井善成、安部裕葵が中盤で流動的にポジションを取りながら、チャンスをうかがった。

「守備の時間が長くなるのは分かっていたし、その中で攻撃では落ち着かせるところでは落ち着かせて、相手陣地でボールを奪えたらショートカウンターを出すのが、今日の狙いでした。守備陣は経験の少ない、若い選手もいましたが、前線は経験のある選手もいたので、前からプレスに行く姿勢を見せることで、自ずと後ろも付いてくる。そういう意味で、役割をはっきりさせることはできたと思います。どんな点差になろうと、前から行くことは変えない。そう決めていたので」

開いていく点差の中でも、チームが方向性を失わなかったのは、そういう理由からだ。そして、そこに突破口を見いだそうとしている。

「時間が経つにしたがってプレスに行くのもきつくなっていったし、簡単に剥がされる場面も増えていきましたけど、そこで引くんじゃなくて、行き続けよう、と。行き続けた先に、僕たちの次のステップが待っていると思います。

行けるときは、全部行く。相手のバックパスに対しては、どんどん(プレスに)出ていく。今日、続けられたことで、みんな精神的に、また一つたくましくなれたと感じます。組むべきときには、しっかりブロックを組もう、という次の段階も見えてくる。今日の結果は残念ですけど、大きな一歩だと思います」

すべてがリセットされるわけではない。それは、これまでもシーズン中の監督交代を経験してきた自身が、よく知るところだ。

「攻撃で大きく方向転換する話は出ていません。それよりも、守備でもっとアグレッシブさ、以前の今治らしい、後ろからどんどん選手が湧き上がってくるような守備を、このメンバーならやれるよね、という話をしています。その上で、攻撃はモウさん(モウレロ前監督)が積み上げてくれたものを、ブラッシュアップしていく。そういう形に持っていければ」

アグレッシブな守備のパワーを、やがて攻撃に直結させる。反撃の道筋は、はっきりと見えている。

Reported by 大中祐二
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