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【取材ノート:藤枝】キャプテン松田佳大のメンバー外で見えた槙野流の選手リフレッシュ術

2026年10月9日(金)
9月から公式戦7試合勝ちなしと苦しんでいる藤枝MYFC。良い試合運びでリードしていながら土壇場で追いつかれた試合が2回あり(大宮戦と湘南戦)、勝ちきれないことが課題になっているが、けっして悲観的な要素ばかりではない。大宮、湘南という上位陣に対して勝点3に値する戦いを見せ、カップ戦ではある程度ターンオーバーした中で京都、C大阪というJ1勢にも善戦した。内容的には手応えのある試合も多く、今後飛躍するための力を蓄えている期間とも言える。
そんな中、5連戦最後の湘南戦で、槙野智章監督らしい興味深い選手起用法が見られたので、その意図や効果についてレポートしたい。

一度重荷を解くことで見えてくるもの

その選手起用とは、開幕から8節までフルタイム出場を続けていたチームキャプテンの松田佳大を、9節の湘南戦で突然メンバー外にしたことだ。筆者をはじめメディア関係者の多くはケガでもあったのかと考えたが、後から聞くとケガもなく純粋にメンバーから外れたとのこと。その意図について、週明けで槙野監督に聞いてみた。

「ここ数試合の(松田の)パフォーマンス、失点への絡み方は、(相手に)抜かれてどうこうより、集中力の欠如とか、何か背負ってるものが重すぎたということを感じました。ディフェンスリーダーとして、キャプテンとしてやらなきゃいけないという責任感が強くて、それがパフォーマンスに良い方向で出ればいいですけど、悪く出てしまっている部分がたくさん見られました。これまでも、キャプテンになったらパフォーマンスが落ちる選手をけっこう見てきましたが、そういう時は1回外して、外から見るというのをやらなきゃいけないんですよ。もちろん、できてないところは本人にきちんと伝えて、彼が自分でやっていかないといけないので、できてないから外したということは本人に伝えました」(槙野監督)

指揮官の言葉通り、9月の松田は失点に絡むミスが増えていたのは事実。そのため筆者もスタメンから外すことはあるかもしれないと考えていたが、ベンチからも外すことは予想外だった。ただ、本人にその理由を明確に伝え、一度スタンドから客観的に試合を観る機会を与えたのは、選手目線に近い考え方が日頃から目立つ槙野監督らしい采配だと感じた。松田本人も、それを前向きに受け止めている。

「もちろん悔しかったですが、学ぶことが多かったなと思います。普段は上から見ることがあまりなくて、映像で見ることしかないので、実際に生で見て、自分だったらどうしているかとか、リアリティのあるイメージを持ちながら見られたと思いますし、すごく有意義な時間だったなと思っています」(松田)

そう語る松田は、すっきりとした晴れやかな表情を見せていた。そして次のようにつけ加える。

「僕のサッカー人生は下から始まっているので、こういうメンバーを外れたりした経験はたくさんありました。でも、そこで諦めないことややり続けること、ブレないというところは、僕の芯というか強みになっているところです。そこはもう何があっても、たとえば長期離脱になったりしても揺るがないですし、志を高く持って毎日を大事に過ごせると思っています」(松田)

もちろん槙野監督は、松田のそうした人間性も理解したうえで今回の決断をしたのだろう。そして火曜日(10/6)の練習後には、対人の守備技術についてマンツーマンで彼に指導する姿が見られた。それを受けて松田は「『あ、そうやるんだ』みたいな、今までなかった感覚というところをすごく学べています。強い選手、速い選手もいるし、動きが細かい選手もいて、いろんなタイプの相手にどう対応するかというところで(槙野監督は)すごい知識と技術を持っていて、直接教えてもらえる環境があるので、盗みたい放題です(笑)」と言う。と同時に、けっして見放されたわけではないということも実感できているはずだ。

「他の選手に嫌がられるぐらい」

そうした個々の心身両面での成長は、松田にかぎらず多くの選手に見られる。とはいえチームとしては、8試合ぶりの勝利を挙げて勝てない流れを止めることが喫緊のテーマとなっている。

「チームとして確実に積み上がってるところはあるんですけど、最後のワンプレーや残り1分で点を取られて引き分けにされてしまうことが今起きていて、その中で僕が何を変えられるのかというと、練習から地道にやる、本当細かいところまで積み重ねるしかないと思っています。最後のところでやられるのは気の緩みだったり、緊張感を作り出せてないこともあると思うし、それが練習から少し足りなかったんじゃないかなと個人的には振り返って思います。そこを他の選手が嫌がるぐらい厳しく言い続けて、やっと伝わると僕は思っているので、あらためてそれを練習からやっていこうと思っています」(松田)

次節・鳥栖戦で松田がどう起用されるかはわからない。だが、自分自身をあらためて整理し直した熱きキャプテンの言動は、藤枝MYFCが勝負強さを身につけていくうえで強力な推進力となるはずだ。

Reported by 前島芳雄