
狙い通りの崩しだった。
1点ビハインドの明治安田J1リーグ第12節・東京ヴェルディ戦の56分、起点は左CB宮大樹からのサイドチェンジ。右シャドーの北島祐二は、右WB橋本悠とのテンポの良いパス交換で右サイドを攻略し、右足から正確なクロスを送る。中央には高くて強いウェリック ポポ。強烈なヘディングでゴールを揺らした。
「相手のシステム的にも横に広げることがチャンスになるし、最後に中が空いてくるというのは、あのシステムだと起こりえることなので、得点シーンは上手く突けたと思います」
自分たちらしく横幅を広く使い、相手を揺さぶって奪った同点ゴール。2023年、期限付き移籍でプレーし、16年ぶりのJ1昇格に貢献した古巣相手に北島自身、今シーズン初アシストを記録した。
「攻撃の選手なので、それが評価されるポジションですし、そこが付かないと上にはいけないという世界なので、一つ数字が付いたことは個人的にはポジティブですね」
前線から効果的にプレスを仕掛け、献身的なプレスバックも厭わない守備に加え、局面ごとに上手く中間ポジションをとりながらビルドアップの出口となってチームの前進をサポートし、的確にボールを捌いて自らもゴール前へ。持ち前の技術の高さも活かしながら攻撃のリズムを作り出す26歳のアタッカーは、今シーズン当初、コンディションが上がらずに苦しんだ。
「なかなか試合に出られず、(チームに)貢献できずに申し訳ないという思いがあって、なんとかしてという思いでもがきながら自分のプレーを模索していたんです」
9月19日の第8節・広島戦で今シーズン初出場。「ようやく今になって、それを表現できるようになってきました」と自信を示すように試合を重ねるごとに北島らしいプレーは戻ってきつつある。そんな彼を塚原真也監督は高く評価し、更なる期待を寄せている。
「今年からシーズンが夏スタートということになって、コンディション作りという点で苦労している選手もいると思いますし、もしかしたら、彼もその一人だったかもしれません。現状では、彼らしく守備のプレッシングのところも含めて攻撃でタメを作るところを担ってくれていますし、他の選手と違ってプレスキックも蹴れるので、第11節のガンバ大阪戦も非常にいいボールを蹴っていて、そういった攻守においてのバランスというのは、非常に彼にとって大事な部分なのかなと思います。さらにもっとやれると僕は信じていますし、そういう姿を過去に見ているので、攻守においてチームを牽引してほしいなと感じます」
ゴールとアシスト、攻撃面で違いを出してチームを勝利に導く。そう胸に誓ってピッチに立っている北島。だが、現実は思うようにはいっていない。公式戦3連敗で迎えた今節、最下位の東京Vに自らのアシストで一時は同点に追いついたものの、その後、突き放されて「切り替えるには時間のかかるような敗戦」を喫した。G大阪戦に続き、J2降格圏に沈む相手との“6ポイントマッチ”を落とし、現在19位。2021年から多くの人が関わり、バトンをつないで守り続けてきたJ1の座を失いかねない厳しい状況に置かれている。
「小さい頃からこのエンブレムを背負って戦ってきたので、降格させるわけにはいかない」
5歳の時にアビスパのスクール(幼児クラス)でサッカーを始め、その後、U-15、U-18を経て、2019年にトップチームに昇格し、百年構想リーグからは副キャプテンを務めている北島。愛するクラブを強くしたい。そんな思いが人一倍強い男は、この難局を乗り越えるために全員の結束が必要だと考えている。
「やっぱり一つの方向を向くこと。持っている熱量はみんなすごいものがありますし、技術もあるし、それを全員が一つの目標に向かって、その目標をはっきりさせることで迷いなくプレーできる。その集合体がチームだと思うので、その熱量を一つの目標に持っていく作業。そこから逸れそうになった時に引っ張る作業。今、ここ(東京)に来ている20人だけじゃなくて、メンバーに入らなかった選手も含めた全員、そこに持っていく声掛けだったり、姿勢だったりというのを僕らが中心に示さないと厳しいのかなと思います。そこを担えるような選手になりたいです」
まだ何かが決まったわけではない。シーズンはまだ3分の2以上残っている。今、大切なのは現状を嘆き、悲観することではなく、冷静に目の前の課題と向き合い、一つずつ解決していくこと。チームとして選手それぞれの頑張る方向性を揃え、攻守に戦術的な整備を徹底して行い、地道に勝点を積み重ねていくしかない。次節は三度、現在勝点で並ぶ最下位の千葉との残留争いに大きく影響する直接対決だ。
「この2試合と同様に直接対決ですし、勝たないと人生が変わる、そう思って2試合やってきたんですけれど、その熱量を今日(東京V戦)の負けで少しでも上げること。このままじゃなくて、もっと高い熱量にしていくことが最低限必要だと思うので、この1週間で身体と心の準備をして千葉にぶつかりたいと思います」
このまま終わってたまるか。どん底から這い上がるべく、博多の漢は、高い熱量でチームを引っ張っていく覚悟だ。
Reported by 武丸善章