
「やり続けてきたことが無駄じゃなかったっていうことを証明できたんじゃないかなと思います」
先週の明治安田J3リーグ第13節。浅川隼人が、2022年から2シーズンを過ごした古巣の奈良戦で2ゴールをマーク。今季リーグ戦での初ゴールを含む2得点で、チームを3-1の勝利に導いた。今季は途中出場やメンバー外も経験し、先発の機会が限られる中でつかんだこの結果。ゴールから逆算したポジショニングを磨き続けてきたストライカーが持ち味を発揮した。
相手の奈良はこの時点で4位。その相手から浅川は16分に先制点を奪う。富所悠を起点とした攻撃で味方が連係してサイドを崩す中、ペナルティエリア内で好機をうかがい、パスに反応して右足で流し込んだ。
その後、同点とされたが、前半終了間際の43分、浅川が再び決める。決定機を逃した後も攻撃が続く中、ゴール前へ。相手DFの意識がボールに向いた瞬間を突き、富所のラストパスを左足で合わせて勝ち越した。この一撃で試合の流れを引き戻し、チームは67分に石浦大雅が追加点を挙げて突き放した。
「どちらのゴールもチームの味方がそこまで作ってくれたというところはもちろんありますけど、その前にしっかりディフェンスとの駆け引きを終えておいてシュートを打てたことと、予測しながら動き続けられたことが(2ゴールの)要因なのかなと思います」
2得点とも富所のパスから生まれた。その富所は、浅川の動きをこう評した。
「隼人はゴール前の最後の勝負の場所で、相手から消えるのが上手い。欲しいところにいてくれるから自然とボールを出せる」
この試合が古巣戦だった浅川について、「FWが点を取ればチームも乗ってくる。取らせてあげたい気持ちもあった」と明かした。
チームは栃木SC戦から長野、奈良戦と3連勝。順位は9位に浮上した。J2昇格プレーオフ圏内の勝点23のチームとは勝点3差に迫っている。
「出場が多い選手、少ない選手に関係なく、本当に競争も今シーズンは激しいですし、準備をしてきたからこそこの3連戦も乗り越えたと思います」と、浅川は振り返る。
浅川自身、今季途中出場が続き、メンバー外となる時期もあった。9月5日の第5節・鹿児島戦で先発したが、決定機を逃し、チームも1-2で敗れた。以降は出場機会が限られ、奈良戦は9試合ぶりの先発だった。それでも自らの役割を見失わなかった。

「どんな時も自分が出場して点を取るところをイメージしながら、日頃の練習をやり続けてきました」
浅川がこだわるのは、ゴールから逆算したポジショニング。相手DFの視界から外れてゴール前で優位な位置を取り、得点の機会を逃さない。このスタイルはこれまでのキャリアを支えてきた土台でもある。
「僕が生きる道というか、ゴールと、そういうふうに準備し続けること。自分が本当にできることだと思うので」
奈良、松本を経て、去年琉球へ加入した浅川だが、課題があったと話す。昨季(2025シーズン)は6ゴール、明治安田J2・J3百年構想リーグでは4ゴールを挙げたものの、1試合で2得点以上を奪った試合はなかった。自身が得点してチームが勝利したのは昨季の明治安田J3第32節・高知戦の1試合のみで、結果的に追いつかれたり敗れたりする試合が多かった。

「1点だけじゃなくて、複数取ることでチームにもよりパワーを与えられると思います」
ゆえに奈良戦は、同点とされる展開でも得点を重ねて勝利を引き寄せた。琉球に加入して初の2得点。あらためてストライカーとしての自信を深めた試合となった。
チーム内の競争が激しい今季、浅川は出場機会を狙う選手たちの意欲がチームの活気につながっていると感じている。ゴールが遠い時間が続いても最後まで走ることをやめない。

「たとえ取れていなかったとしてもやり続けるでしょうし、僕はもうそれしかないかなと思います」
連続ゴールや連勝といった記録にはとらわれない。
「まずは目の前の1勝だし、僕も次の1ゴール。1つ1つ積み上げることでしか結局は上には行けないので」
奈良戦でのゴールは、浅川が貫いてきたストライカーとしての姿勢が結実した。1ゴールずつ積み重ね、その先の勝利につなげる。
Reported by 仲本兼進